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中央労福協「2017年度全国研究集会」に参加!

  • 開催日:2017年6月5日(月)~6日(火)
  • 場所:横浜市 ワークピア横浜
  • 参加者:大阪市地域労福協 副会長 入江 寛

 中央労福協「2017年度全国研究集会」がワークピア横浜で開催されました。メインテーマとして「どうする日本の貧困問題!求められる地域の役割とは?」として、生活困窮者や子供の貧困問題などに着目し講演、特別報告がされています。今回の全国研究集会には、大阪市地域労福協より入江副会長が参加しレポートを提出していただきましたので、ご紹介をします。

講演Ⅰ 「社会の変化と生活困窮者自立支援」
     講師:前内閣官房地方創生統括官 山崎 史郎氏

 「貧困・困窮者支援」において重要な点の1つは「ワンストップ・サービス」(一度の手続きで、必要とする関連作業をすべて完了)であり、行政サービスの統合を課題として取り組んでいる。場所のワンストップ化に限らず、五石氏の提言にあるように、相談者に対し個別の支援担当者を置くことにより「人によるワンストップ化」を図り、相談者に必要な様々な支援内容を支援サイドが用意することも重要だと思う。現在は住居についての支援も不十分だ。貧困問題の現状は、既存の枠組みを超えており、生活基盤の確保を充実させることが今後の課題だ。ワーキング・プアの問題については、職業能力を高めて自立した生活を送ることを目指すことが重要となるが、最低賃金の問題も大きなテーマであり、給付付き税額控除のような公的制度も検討課題となっている。

中央労福協 神津里季生会長

中央労福協 神津里季生会長

神奈川県 黒岩祐治知事

神奈川県 黒岩祐治知事

講演Ⅱ 「日本における子どもの貧困の現状と対策」
      講師:放送大学 副学長 宮本 みち子氏

放送大学 宮本みち子副学長

放送大学 宮本みち子副学長

 若者にきちんとした教育や就労の機会を与えないと、知識やスキルがないまま中年になります。すると、満足な収入を得られる職に就けず、生活保護を受けるしかないような状況になってしまう。

 子どもや若者の問題というのは、社会の『アンテナ』と地域が、一丸となってこの問題に取り組まなければいけないという自覚がとても大切だと思います。

 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代を経過した日本は、戦後の貧しい時代とは違います。そのため、貧困とはどういう状態かを知らない人は少なくない。目の前の子どもが、昨日も今日も明日も同じ服を着ているのにピンと来ない。子どもが、自分の貧困を訴えることは非常に大変なことですので、まずは周りの大人が『アンテナ』を張らなければ、問題は解決しないのです。

特別報告1「さまざまな協働によるフードバンク活動の推進」
    報告者:NPO法人フードバンクふじのくに 事務局長 鈴木 和樹氏

 日本では、食料自給率が4割(カロリーベース)を切っているにも関わらず、印字ミスや外箱の破損等の理由で流通させることができずに処分せざるを得ない食料は年間約5~800万トンと言われており、これは日本の米の生産量に相当します。その一方で、明日の食事にも事欠く人が増えています。私たちは、この矛盾した2つの問題を結びつけ、処分せざるを得ない食料を預かり、本当に食料を必要としている人や場所に届ける、フードバンク事業を行います。

 フードバンク活動を行うことで、企業は処分コストの削減ができ、地域の社会貢献につながり、また、環境負荷の軽減といった効果も期待できます。その一方で、困窮者が食料の支援を受けることにより、節約をすることができた食費を就職活動等、別のことに使うことができるようになり、生活に余裕ができることになります。また、大規模災害のおそれがある静岡県において、フードバンク倉庫は食料備蓄庫としての機能も担います。

特別報告2「にこにこ食堂」の取り組み
      報告者:茨城保健生活協同組合 理事 岡部 佳代子氏

 日本で子どもの貧困への関心が高まる中、2012年に東京都大田区の八百屋を営む女性が「こどもが一人でも安心して来られる無料または低額の食堂」との思いで名付けた「こども食堂」の開設が今年に入って急増しています。将来の社会を担っていく子供への貧困対策は社会の責務であると同時に高齢者の孤立対策も課題であり「みんなの居場所」を作ることが大事です。

特別講演「生きてさえいればいつか笑える日が来る」
     講師:NPO法人抱僕 奥田知志氏と生笑一座

NPO法人抱僕 奥田知志氏と生笑一座のみなさん

NPO法人抱僕 奥田知志氏と生笑一座のみなさん

 これまで日本は「強い社会」を目指してきました。けれどその限界ははっきり見えています。誰もが弱さを抱えている以上、その弱さを前提とした社会でなくてはなりません。もちろん、がんばらないといけない局面もあります。けれど弱さを前提としてうえでがんばるという社会と、強くなるのを前提とした社会とでは後先が全然違います。

 「ホームレスのことはホームレスの人に話してもらおう」と、2013年、野宿生活から自立した人たちで「生笑(いきわら)一座」を結成し、全国を回っています。目的はひとつ。子どもたちに「人生には思いもよらないことがあるけど、生きてさえいれば、きっと笑える日がくる。助けてと言っていいよ」と伝えることです。

 これまでホームレスという経験は隠すべきもの、恥ずかしい経歴だとされてきました。しかし彼らの言葉は真っすぐに子どもたちに届き、交流が生まれています。野宿という痛みをもっているおじさんたちが存在の不安を感じている子どもたちを勇気づけ、子どもたちもまたおじさんたちを励ます。価値がないとされてきたことを、まったく違う位相のなかで価値を見い出す。こうした仕組みをあちこちで、できるだけたくさんつくっていく、今、この社会がもう1度生まれ変わるチャンスの時を迎えています。

集合写真

集合写真